駄文型

プログラミングとか英語とかの話題を中心にした至極ちゃらんぽらんな日記です。

Excel方眼紙との出逢い

僕がはじめてExcel方眼紙に出会ったのは確か二十歳の時のだったと思う。大学に提出する書類のテンプレートとして渡されたExcelファイルが所謂Excel方眼紙」と呼ばれる手法で作られたものだった。

その時僕は特に何の疑問も抱かずに、言われるがまま所定のセルに必要な情報を打ち込み、そのまま印刷して大学に提出した。

「これ文字がはみ出してるよ。作り直してきて」

何を言ってんだこいつ。職員に書類を突き返された僕はそう思った。ついさきほどまで見ていたExcelの画面では確かにセル内に収まっていた。それは確認済みだ。だが書類を見直すと確かに文字が切れている部分がある。ひらがなの「む」が半分ほど切れている。切断されたひらがなの「む」を見て僕はひどく狼狽した。何故切れているんだ。確かにさっき確認したのに。全然関係ないけど「む」って右側を切っても「す」には見えない。子供の頃「む」って右側切れは「す」じゃね?これすごくね?大発見じゃね?と思っていだが、これは全然「す」じゃない。あの頃の自分に会ったら言ってやりたい。「む」は切っても「す」にはなれないよ。「む」はどこまで行っても「む」なんだよ。他のなにものにもなれやしないんだよ。仮に右側を切り離したとしても、それは切れた「む」でしかないんだよ、と。僕の目の前にあるのは無残にもExcelの罫線に切断された「む」があった。決して「す」ではない。紛れもなく「む」だった。いや、彼は「む」にもなりきれていない。不完全な形でインクジェットされたかつて「む」だった何かだ。その何かは僕に語りかけてきているように思えた。「こんな不完全な形で産み落とされるくらいなら一生ハードディスクに残っていた方がましだった」、と。そうだ、彼はこんなふうに世に出るべき者ではなかった。もっと違った未来があったはずた。公的な書類の一部として、華々しく活躍するはずだったんだ。それを夢見て彼は故郷のPCを飛び出した。その結果がこれだ。なんと世界は残酷なんだろう。何が彼をこんな風にしたのか。僕は恨んだ。何を恨んだんだろう。気付けば僕はExcel方眼紙を憎悪するようになっていた。

つづく(多分)

(2014.12.29追記)

続き書きました。

デメリットを呼びかけるだけではExcel方眼紙との闘いには勝てない - 駄文型