駄文型

プログラミングとか英語とかの話題を中心にした至極ちゃらんぽらんな日記です。

住宅手当がなくなった時の話

もうしばらくの話だが,うちの会社の住宅手当が廃止になった。廃止が適用になったのはすべての従業員ではなく,ある一部の従業員に限られていた。会社の言い分としては住宅手当というシステムそのものが時代にそぐわなくなってきているため,住宅手当分は賃金に含めるようにしたいとのことだった。実際廃止された住宅手当と同額分が賃金に上乗せされたようだった。

一方的に廃止が決まったわけではなく,事前に組合との交渉があった。私個人も組合を通して意見を言う機会があったが,その時は何も言わなかった。だが今はそれを後悔している。

住宅手当の役割

そもそも,住宅手当は複数の地域にまたがって展開する企業が,異なる地域で勤務する従業員間の不平等を軽減するために設けられたものだ。実際私の会社でも東京近郊勤務の従業員とそれ以外の従業員では受け取れる住宅手当が異なる。

住宅手当を廃止する会社としては,そのような平等性よりも,より成果を上げた従業員に対して高い給与を支払いたいということであろう。

「手当の代わりに給与アップ」の根拠に注意

さて,冒頭で述べた会社と組合の事前協議だが,会社側は住宅手当の金額分をすでに賃金に上乗せしている実績を根拠に住宅手当の廃止を提案した。会社側は賃金アップに努めており,数年前から少しずつ給与を上げてきた。それが今年度から住宅手当と同じ額になるため,手当を廃止すると言うのだ。結果的には従業員に支払われる額が同じなため,とくに廃止に抵抗する理由はないと組合は考えていた。

しかし賃金アップとして会社側が出した証拠が不十分だった。会社側が出したのは賃金の平均値の上昇のみだったのだ。

平均値だけでは

平均値が上がっているのだから会社が頑張って賃金アップに努めたように見えるが,この場合必ずしもそうとは言えなかった。今回対象となるのは一部の従業員だけであり,彼らの給料の合計が上がっているのは間違いない。だがそれが会社側の言うように「住宅手当分を給与に転嫁した」とは限らない。うちの会社の場合(他の会社もそうかもしれないが),従業員の給与額は本人の入社年度に大きく依存する。つまり住宅手当の廃止対象となる従業員の構成に変化がなければ,黙っていても彼らの平均給与は上がっていく仕組みになっていたのだ。これでは手当分を給与に転嫁したとは言えない。

より生データに近いものを要求すべき

今回の場合,私の手元にあったのは単なる平均値だけだった。対象の従業員の人数も年次の構成もわからない。個人の給与データなので,そのままの情報を開示はできないだろうが,「住宅手当分を給与に転嫁した」と言えるだけのデータを要求すべきだった。少なくとも年度ごとの年次構成の変化のデータは必要だっただろう。 賃金アップを根拠にするなら

この件でもう一点後悔がある。それは賃金が下がった場合の処置について約束を取り付けなかったことだ。この時会社側は賃金を上げた(ことになっている)実績を根拠に手当を廃止した。ならば,賃金が下がってもとの水準に戻った時の対応を事前に決めておくべきだった。上がった分の賃金は下げない。もし下がってしまったらすぐに手当を復活させる。そういう約束を取り付けるべきだったろう。もとの水準に戻ってしまったのに手当が復活しなければ,手当がなくなった分は完全に賃下げである。約束をしないということは,実質的な賃下げを許容したことになる。

給料の話はなんとなくタブー感があるが,慎重に検討することも大切だと思う。